2025年版 エネルギー基本計画の全貌|最新動向と政策のポイント
エネルギー基本計画とは?基礎知識と最新動向

更新日:2025年2月18日
エネルギー基本計画は、日本のエネルギー政策の根幹を担う重要な指針です。政府は3~4年ごとにこの計画を改定し、国内外のエネルギー事情や技術革新を反映させています。2025年に向けた「第7次エネルギー基本計画」では、2040年度を見据えたエネルギー政策の方向性が示されており、特に再生可能エネルギーの導入目標や原子力発電の位置づけが焦点となっています。
本章では、第7次計画の変更点や2040年度の電源構成について詳しく解説します。
エネルギー基本計画の目的と役割
エネルギー基本計画の目的は、日本のエネルギー供給を安定させ、環境負荷を軽減しながら持続可能な発展を実現することにあります。特に近年は、気候変動対策の一環として温室効果ガスの削減が求められています。エネルギー政策の基本的な考え方として、安定供給(エネルギーセキュリティ)、経済性(コスト削減)、環境適合(脱炭素)の三つの要素をバランスよく取り入れることが求められます。
第7次エネルギー基本計画では、これまでの政策を踏襲しつつ、脱炭素社会の実現に向けた具体的な道筋が示されています。例えば、再生可能エネルギーの導入拡大、原子力の安全性確保、電力の自由化推進などが挙げられます。
これらの取り組みにより、エネルギー供給の安定性を確保しつつ、2050年のカーボンニュートラル目標に向けた進展が求められます。
第7次エネルギー基本計画の主な変更点
第7次エネルギー基本計画では、前回の計画と比較していくつかの大きな変更点があります。まず、再生可能エネルギーの導入拡大がさらに加速され、2040年度には再生可能エネルギー比率を5割程度まで引き上げる目標が示されました。これは、気候変動対策の一環として再生可能エネルギーを主力電源化する流れをより強固にするものです。
また、原子力発電に関しては、前回の計画で示されていた「可能な限り依存度を低減する」という方針が見直され、安全性を確保しつつ一定の役割を維持する方向にシフトしています。さらに、火力発電については、CO2削減技術の導入やCCUS(炭素回収・貯留)の活用を前提に、依然として重要な電源の一つとして位置づけられています。
政策の変更点は、多様なエネルギー源のバランスを取ることを目的としており、安定供給と脱炭素の両立を目指すものです。これにより、日本のエネルギー構造は大きく変化することが予想されます。
2040年度の電源構成と再エネ比率の目標
第7次エネルギー基本計画では、2040年度の電源構成について、再生可能エネルギーの割合を「4~5割程度」とする目標が示されています。この目標を達成するためには、太陽光・風力・地熱などの導入を加速し、地域分散型エネルギーシステムの整備が不可欠となります。
再生可能エネルギーの比率を引き上げるためには、送電網の強化やエネルギー貯蔵技術の進化が求められます。特に、再エネの出力変動を安定化させるための蓄電池の普及が鍵を握ります。政府は今後、蓄電池技術の開発支援や、地域間連系線の整備に力を入れる方針を示しています。
また、再生可能エネルギーの拡大と並行して、エネルギー効率の向上も重視されています。電力需要のピーク時に対応できるよう、デマンドレスポンスの導入やスマートグリッド技術の発展が求められるでしょう。今後は、政策支援と技術革新の両輪で、2040年度の目標達成に向けた動きが加速すると考えられます。
エネルギー政策の最新トレンドと技術革新

エネルギー政策は、技術革新と市場の変化に応じて進化し続けています。第7次エネルギー基本計画では、2040年度に向けたエネルギー構成の見直しが進められ、再生可能エネルギーの拡大、原子力発電の活用、火力発電の効率向上が重要なテーマとなっています。また、蓄電池技術や水素エネルギーなどの新技術が台頭しており、エネルギーの安定供給と脱炭素の両立が求められています。本章では、再生可能エネルギーの導入と課題、原子力発電の役割、化石燃料の新たな戦略について詳しく解説します。
再生可能エネルギーの導入と課題
再生可能エネルギーは、日本のエネルギー政策の中心的なテーマとなっており、政府は2040年度までに全電力の4~5割を再生可能エネルギーで賄うことを目標に掲げています。特に、太陽光発電と風力発電の普及が進められていますが、これらの導入には課題も存在します。
第一の課題は、出力の変動性です。太陽光発電や風力発電は天候に左右されやすく、発電量が安定しないという問題があります。これを解決するために、大規模な蓄電池システムの導入や、地域間の電力融通を可能にするスマートグリッドの構築が進められています。
第二の課題は、導入コストと送電網の強化です。再生可能エネルギーの発電コストは低下傾向にありますが、送電インフラの整備が遅れている地域では、再エネを十分に活用できないケースが見られます。そのため、政府は送電網の強化や蓄電技術の開発に資金を投入し、再エネ比率の拡大を推進しています。
第三の課題は、土地の確保です。特に日本は国土が限られているため、大規模な再生可能エネルギー施設の設置が難しいケースもあります。この問題を解決するために、洋上風力発電の拡大や、建物の屋上を活用した太陽光発電の普及が進められています。
再生可能エネルギーの拡大には多くの課題がありますが、技術革新や政策支援により、今後さらに普及が進むことが期待されています。
原子力発電の役割と政府の方針
第7次エネルギー基本計画では、原子力発電の位置づけが再評価されています。福島第一原発事故以降、日本の原子力発電の比率は大幅に低下しましたが、エネルギーの安定供給と脱炭素の観点から、一定の役割を果たすべきとの方針が示されています。
政府は、安全性を確保しつつ既存の原発を最大限活用する方針を打ち出しています。また、次世代原子炉の開発も進められており、高速炉や小型モジュール炉(SMR)など、新技術を活用した原発の導入が検討されています。これにより、従来の原発よりも安全性が高く、柔軟な運用が可能になると期待されています。
一方で、原子力発電の再稼働には国民の理解が不可欠です。福島第一原発事故の記憶が残る中で、政府や電力会社は透明性を確保し、安全対策を徹底する必要があります。また、放射性廃棄物の処理問題も未解決の課題として残っており、最終処分地の確保が今後の重要なポイントとなります。
化石燃料と脱炭素の両立戦略
脱炭素社会の実現に向けて、化石燃料の使用を削減する動きが加速しています。しかし、日本のエネルギー供給の安定性を考えると、短期間で完全に化石燃料を排除することは困難です。そのため、第7次エネルギー基本計画では、化石燃料を段階的に低減しつつ、低炭素技術を活用して脱炭素化を進める戦略が示されています。
まず、火力発電におけるCO2排出削減技術の導入が進められています。例えば、二酸化炭素回収・貯留技術(CCUS)の導入により、排出されたCO2を回収し、地下に貯留する試みが行われています。また、アンモニアや水素を燃料として活用する「ゼロエミッション火力」の開発も進められており、従来の火力発電に比べて温室効果ガスの排出量を大幅に削減できる可能性があります。
さらに、ガス火力発電では、天然ガスから水素を生成し、その過程で発生するCO2を回収する技術が研究されています。これにより、化石燃料を使用しながらも脱炭素化を実現することが期待されています。
化石燃料の完全な排除は現実的ではありませんが、新技術の活用や政策の工夫により、持続可能なエネルギーシステムの構築が進められています。今後は、脱炭素とエネルギー安定供給の両立を実現するための具体的な施策が求められるでしょう。
企業・消費者が注目すべきエネルギー政策

エネルギー基本計画の改定により、企業と消費者が直面するエネルギー環境も大きく変化しています。電気料金の変動、省エネ技術の進化、企業のエネルギー戦略が求められる中、経済性と環境対応のバランスを取ることが課題となっています。特に、脱炭素政策が強化される中で、どのようにコストを抑えつつ持続可能なエネルギー利用を進めるかが重要なポイントです。本章では、企業・消費者が注目すべきエネルギー政策について詳しく解説します。
電気料金の変化と影響
エネルギー基本計画の見直しに伴い、電気料金の変動が企業や家庭に与える影響が大きくなっています。特に、再生可能エネルギーの導入が進む中で、FIT(固定価格買取制度)に依存していた電力コストが変化し、今後は市場価格に連動する形で電気料金が決まる傾向にあります。
電力市場の自由化により、企業や家庭は複数の電力会社から供給を選択できるようになりました。しかし、電力価格は再エネ導入のコストや世界的なエネルギー情勢によって大きく変動するため、企業は電力コストの見直しを行う必要があります。特に、大口需要家の企業は、PPA(電力購入契約)を活用し、長期的な価格安定を確保する動きが進んでいます。
また、電気料金の上昇は消費者の家計にも影響を及ぼします。節電対策の強化やエネルギー効率の良い家電製品の導入が推奨されており、政府も補助金制度を活用しながら消費者負担を軽減する方針を示しています。今後は、再エネ比率の上昇とともに、電力コストの適正化が重要な課題となるでしょう。
省エネ技術の進化と節電対策
エネルギー効率の向上は、企業・消費者のコスト削減だけでなく、環境負荷の低減にも寄与します。最新の省エネ技術は、エネルギー消費を最適化し、無駄な電力使用を削減することを目的としています。
企業においては、スマートメーターやエネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入が進んでいます。これにより、リアルタイムでの電力使用状況の監視が可能となり、ピーク時の電力使用を抑えるデマンドレスポンスの活用が推奨されています。さらに、工場やオフィスビルでは、LED照明や高効率空調システムの導入が進み、電力消費の最適化が求められています。
一方、家庭では、最新のスマート家電が注目されています。AIを活用したエアコンや冷蔵庫は、使用状況に応じて最適な運転を行い、電力消費を最小限に抑える仕組みが導入されています。また、家庭向け蓄電池の普及により、夜間の安い電力を蓄えて日中に使用することで、電力コストの削減が可能になっています。
政府は、こうした省エネ技術の普及を促進するため、補助金制度を強化しています。企業や家庭が省エネ設備を導入しやすい環境を整え、持続可能なエネルギー利用を推進する方針を示しています。今後は、省エネ技術の更なる進化とともに、エネルギー消費の最適化が求められるでしょう。
企業が取り組むべきエネルギー戦略
企業のエネルギー戦略は、コスト削減と環境対応の両立が求められています。特に、大企業を中心にESG(環境・社会・ガバナンス)投資の拡大が進み、脱炭素経営の重要性が増しています。
まず、企業が取り組むべき戦略の一つが、再生可能エネルギーの活用です。大企業では、RE100(事業運営の電力を100%再エネで賄う国際イニシアティブ)への参加が増えており、再エネ由来の電力を積極的に導入する動きが進んでいます。PPA(電力購入契約)を活用し、自社の電力供給を長期的に確保する企業も増えており、エネルギーコストの安定化が期待されています。
次に、省エネ技術の活用です。工場やオフィスでは、エネルギー管理システムを導入し、エネルギー使用の最適化を図る企業が増えています。特に、スマートビルディング技術を取り入れた企業は、電力消費を抑えつつ快適な職場環境を維持することが可能になっています。
また、カーボンクレジットの活用も注目されています。企業は、自社の排出するCO2を削減するだけでなく、カーボンオフセットを活用し、環境対策の強化を図る動きが進んでいます。これにより、企業は持続可能な成長を目指しつつ、投資家や消費者の信頼を獲得することができます。
今後のエネルギー政策の変化に対応するため、企業は長期的な視点でエネルギー戦略を見直し、脱炭素社会の実現に向けた具体的な取り組みを強化していく必要があります。
今後のエネルギー政策の課題と展望

エネルギー政策は、持続可能な社会の実現と経済成長の両立を目指して進化し続けています。特に、再生可能エネルギーの導入拡大、エネルギー安全保障の強化、次世代技術の活用が今後の重要なテーマとなります。本章では、パブリックコメントによる国民の意見の反映、エネルギー安全保障の確保、次世代エネルギーシステムの可能性について解説します。
パブリックコメントと国民の意見
エネルギー政策の策定には、国民の意見が重要な役割を果たします。政府はエネルギー基本計画の改定に際して、パブリックコメントを通じて広く意見を募集し、政策決定に反映する仕組みを採用しています。
近年、再生可能エネルギーの拡大や原子力発電の再評価に関する議論が活発化しており、国民の意見も多様化しています。特に、脱炭素社会の実現に向けた政策の加速を求める声や、電力供給の安定性を確保するためのバランスの取れたエネルギーミックスの必要性が指摘されています。
政府は、パブリックコメントの結果をもとに、具体的な政策を検討し、社会の意見を反映させる方向性を示しています。今後も、国民の声を取り入れながら、実効性のあるエネルギー政策の推進が求められるでしょう。
エネルギー安全保障と国際動向
エネルギー安全保障は、国の経済や社会の安定に直結する重要な課題です。近年、国際的なエネルギー情勢の変化や地政学的リスクの高まりにより、エネルギー供給の安定確保がますます重要視されています。
日本は、エネルギー資源の多くを海外に依存しているため、安定したエネルギー供給を確保するための多角的な戦略が必要です。その一環として、再生可能エネルギーの国内生産の拡大や、LNG(液化天然ガス)調達先の多様化が進められています。また、国際的な協力を強化し、エネルギー市場の変動に対応できる体制の構築も求められています。
今後、日本は国際的なエネルギー政策の動向を注視しながら、持続可能なエネルギー安全保障戦略を強化していく必要があります。
次世代エネルギーモデルの可能性
技術革新により、次世代エネルギーモデルが急速に発展しています。特に、水素エネルギーや蓄電池技術の進化が、今後のエネルギー政策に大きな影響を与えると考えられています。
水素エネルギーは、CO2を排出しないクリーンなエネルギー源として注目されており、日本は水素社会の実現を目指して技術開発を進めています。水素ステーションの整備や、水素を利用した発電技術の実用化が進められており、今後さらに普及が加速すると予想されます。
また、蓄電池技術の発展により、再生可能エネルギーの導入がさらに拡大することが期待されています。特に、大規模な蓄電池システムを活用することで、太陽光発電や風力発電の出力変動を抑え、安定した電力供給が可能になります。
これらの技術の発展により、従来の集中型電力システムから、より分散型で柔軟なエネルギーシステムへと移行することが期待されています。今後も技術開発と政策支援を組み合わせながら、持続可能な次世代エネルギーモデルの構築が進められるでしょう。